菜月の居ない世界で

次女 菜月の自死からの記録 菜月の居ない世界

菜月の自死未遂と家族(1.Oct)

<2020年 10月1日(木)>

朝礼後、またH取締役に呼ばれる。
状態については何も進展無い事を伝えた。あなたはどんな関係ですか?
親族と同等と思ってますか?そんなに親密でしたか?どこまで無神経なんだ。
今すぐ日本に帰国する手配しろ!こんな時にお金の心配するな!
傍から見ると行動を起こさない私が変なんだろうか。
菜月に会いたいに決まってる。今すぐ飛んで行って声を掛けたい。
菜月の入院先はコロナ患者の受け入れもしている。その為なのか現在の病院一般がそうなのか解らないが、基本見舞いができる家族は登録した1名だけとなっている。
菜月が搬送された時も結局、有香は院内に入ることができず駐車場で待っていた。
昨日は入院手続きの折に医者の計らいと、有香が看護師学校生で有る事も考慮されてか、
交代で面会できた様だ。祖父・祖母は家から搬送される時に僅かに見る事が出来ただけだ。

Thailandは現在 入国拒否対象国になっている。
日本と比べると感染者は少なく、コロナ対策に成功した国に失礼な処置と言わざる得ない。
しかし、この指定ルールにより入国の規制は厳しく、PCR検査は勿論でその後は、
指定Hotelか自宅での2週間隔離となる。移動に公共手段は使えない。
菜月に会いに行く為には自宅待機は論外となる。
曖昧な対応すると家族が濃厚接触者とみなされ、病院への立ち入りを拒否されかねない。
皆に迷惑を掛けなく帰国する方法としては、
現在 タイ⇔日本は 成田か羽田しか無い。1便で100名程に限られてる。
費用も片道15万程課掛かる。到着空港でPCR検査を実施した後に、
空港付近で2週間の監禁生活を送る。その後、公共交通機関を避けレンタカーで岐阜まで移動する。これしかない。それでも面会させてもらえるか解らない。
一応これが、光美と有香の濃厚接触者となった場合の病院が示すガイドラインだ。

参考までに、菜月に面会できるならお金に返られない。
しかしながら、我が家に一週間滞在予定でも、実際には出国のチケット入手が困難だ。
タイ国のワークパーミットとビザがあるので、ビジネス目的にて短期で出国できるが、
今1便100名の乗客で飛んでいるらしい。約10,000人が予約待ちしている様だ。
会社に業務として申請する事を依頼しても、チケット入手にどれ程費やすのか。
仮に出国できたとしても、タイ国の入国条件は日本より厳しい。
出国前のPCR検査・英文の安全証明書が必要であり、タイ国に入国後も
数度のPCR検査、国指定のホテル監禁2週間が待っている。
知人が最近入国したので聞いた所。
飛行機代 15万円 Hotel代 28万円 PCR検査費 12万 
入出国全て合わせて 概算80万円掛かる。会社には1ヶ月以上の休暇取得。
費用は全額実費となる。それでも菜月に会えるなら問題無い。
しかし、菜月に会える確約無ければ判断は難しい。

部屋に帰ったら雨漏りしていた。
部屋の修理のため一時部屋を替わる様にHotel側から言われた。
今週末もGolfの予定が入っていたが、行く気は無いから引越しも良いかも。
そう思いながらしばらく部屋を眺めていたら、寝室のドアノブに目が行った。
菜月はドアノブでカバンのベルトで吊った様だ。
ドアノブの事は良く聞くが、本当に可能なのか?疑問がよぎる。
すぐに立ち上げって逃げてしまえるじゃないか。寝室のドアノブにベルトを使い、
少し腰を浮かせて首を掛けた。徐々に体重を掛けると首にベルトが食い込む。
喉仏を押され、途端に咽こみ逃げた。
何て苦しいんだ、これを乗り越えてまで死にたい気持ちの強さ 
菜月に何があったんだろう。涙が溢れて来る。

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