菜月の居ない世界で

次女 菜月の自死からの記録 菜月の居ない世界

面会


<2020年10月10日(土)>
海外より帰国した者はCovid-19感染検査を実施し、陰性が確認されれば入国が認められる。
しかしながら、基本14日間は隔離生活を送ることになっている。
昨日の光本担当医に相談したところ。
陰性の検査結果労働厚生省にて面会についての了承を頂ければ面会をさせて頂く事となった。

菜月は脳死に向っている。何とか奇跡は起こらないのだろうか。
脳死の可能性が高くなるにつれて臓器提供の話がでた。
万が一菜月が脳死になった場合は考える必要が出る。
今は可能性が有るに留めている。
後で聞いた事だが、私の面会が叶ったのも、臓器提供の可能性があったからの様だ、
臓器提供を最初から断っていたら、面会は叶わなかったと思われる。

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14:00に岐阜県立多治見病院についた。
既に光美達は面会に行ってる筈だ。
自分とは接触しない。仕方ない処置だ。
恵那の祖父・祖母と中津川の祖母、光美と有香の5人と聞いていた。
朝の段階で、妹である京子が来たがってた様であるが、関東在住を理由に断られている。
又、祖父・祖母も本来面会できないが、私から頼んだ所、特別に許可が出て。
中津川の姉(渡辺)は以前から、狭い了見の中で自分お意見を押し込んでくる。
今回、有香と光美が私との大きな亀裂を作ったのも、この姉が絡んでいる。
何処から聞いたか不確かな噂を光美に伝えた。光美は姉の言葉を鵜呑みにしている。
後で判明したことだが、この姉も面会した様だ。何て勝手な連中だ。
親である私に感染者のごとく言い、厚生労働省は良いと言ってるにも関わらず
危ない・危ない その挙句、自分はどさくさに紛れ面会に入る。何て恥知らずなんだろう。

面会の用意が出来たら携帯電話に連絡が来る事になっている。
15:22にやっと連絡が入った。救急搬入口に向かい、待っていた看護師の方と2FのICUに向う。
手袋とエプロンをしてICUに入った。
菜月が寝ている。少しまぶたが赤くはれてる様だ。手を握ると手袋越に体温が伝わった。
暖かい。口には人工呼吸器の管が挿入されている以外は、本当に寝ている様だ、
人口呼吸器での呼吸だが、胸が呼吸に合わせ動いている。寝息のような音も聞こえる。
きっと菜月は戻ってくると信じてたけど、一気に現実に突き落とされた。
これまでの事が夢であってほしいと思い続けたが現実だった。
光本担当医も来て下さり、菜月の現状を説明して下さった。限りなく脳死に近いようだ。
手を握り、頬を触りながら何を思って見つめたろう。何も思い出せない。
ただ涙が出て、人前などお構いなしに泣いた。
菜月の苦しみに何一つ気がつかなかった。本当にごめん。