脳死判定
＜2020年10月13日(火)＞
朝8:00から菜月の脳死判定が実施される。11:00頃まで掛かるらしい。
判定結果を聞くために病院に向う。
昨日面会許可証を頂いたので、
正面玄関にて受付に見せると検温後すぐに病院に入れた。
ICUの有る2Fまで行き、インターホーンで連絡する。
10:45に１回目の脳死判定がでた。やはり奇跡は起こらなかった。
菜月の死亡は何時になるんだろう。脳死判定後？
これは、後の面会のときに看護師が教えてくれた。
菜月に４日連続であえた。
今日は全て言葉にして話しかけながら過ごす。
菜月に触れながらしゃべる。それも4日連続、何年ぶりの事だろう。
今日も謝ってばっかりだ。ふと髪の毛を触りながら菜月の幼い頃を思い出した。
汗っかきで昨日の夜に髪の毛を洗った筈なのに臭い。
一日放置した弁当箱の米が発酵したような匂いがした記憶がある。
顔を頭に近づけ、マスクを少しずらして頭の匂いを嗅いで見た。
なんとシャンプーの香りがする。その行為を見ていた看護師の方から
脳波検査後に髪の毛を洗った事を聞かされた。
私としては、菜月の臭い匂いを最後に嗅いで見たかったので少し残念であった。
色々話した。タイ旅行をもう一度したかった事。菜月の看護師姿が見たかった事。
菜月の結婚の話はしなかったけど、
孫を見せてくれるのは菜月しか居ないと思ってた事。
少し話し名がら胸を触ると、呼吸で動いている事が解る。
心臓の鼓動も聞きたかったが、それは止めておいた。
光美が菜月の生命線が切れてると言っていたので、看護師と一緒に手のひらを見たが
良く解らなかった。看護師が写真取ってもいいよと言って下さったがこれも止めた。
菜月の写真は笑った写真が良い。
夕方 17:00頃より２回目の脳死判定が行われる。
この２回目で脳死判断された時に菜月は死亡となり現世から居なくなる。
当初、光美とは同席できないから、病院の敷地内で待つつもりだったが、
Hotelに帰ってきてから頭が少し痛く横になっていた。
今無理をして明日菜月に会いにいけないと困るので、２回目はHotelで待機し
結果を待つ事とした。
心は揺れ動く。もう一度光美に電話して”俺たちが殺す様な気がして”と伝えると、
あのまま、何日も生かされる菜月が可愛そうだから。
その方が辛いと光美は言い切っていた。
そう思う他無いと解っていても、うろたえる。菜月に対し後悔が多い自分の罪だ。
良い母として光美は菜月と仲良くしていたから、菜月の望む事が解っているのだろう。
菜月、光美 ごめんなさい。
2020年10月13日 水曜日
